西粟倉村ローカルベンチャー
インキュベーションセンター amoca

建築・内装

家具・什器

ワークショップ

プロジェクト概要

岡山県の最北東端に位置する西粟倉村にて、西粟倉村ローカルベンチャーインキュベーションセンター amocaがオープンしました。
村では2015 年に起業型人材の発掘・育成する「ローカルベンチャースクール」 というプログラムがスタートし、2021年現在では40社ほどの様々な事業に取り組む起業家が集う村となっています。一方で、起業家の活動する場所が不足する状況にもなっている状況から、amocaは生まれました。

西粟倉村が所有し、長らく活用されていなかった敷地が amoca の候補地としてある中で構想を具体化していくためのワークショップからスタート。
ワークショップを経て設計を進め、事務所や制作の場のテナントが集まる、不定形な平面形状を 持った「新築棟」と、その向かいに位置する、民芸館として敷地内にもともと建っていた建物を改修したコワーキングスペースである「既存棟」の2棟の構成となりました。

特定の企業や限定的な利用者のみを対象とした「小さく閉じた場所」ではないが、不特定多数の人による頻繁な出入りがある「大きく開かれた場所」でもない。 そのため、何らかの規範の元に、利用者がひとつの建築に広がる空間の中で個性的で自由でフラットな関係性を保持し共存することを想定するのが適切ではないかと考えました。すなわち、ある種の都市的ともいえるような状況を内包した建築とすることで、個人と他者、ひいては個人と公共との理想的なあり方を模索し、西粟倉村に持続可能な歴史と未来が連続する新しい風景をつくりだすきっかけとなることをめざしました。

新築棟において、放射状に配置された各テナントは、外部に対して開き、内部にはテナント同士が共有するホールに対して向かい合うような配置としました。 入居者同士や入居者の家族の交流、クライアントとの打ち合わせなど、様々なアクティビティが同時多発的に起こるような、この村での仕事と生活を象徴する、多様性のあるホールを表現しています。

所在地
岡山県英田郡西粟倉村
建築主
西粟倉村
設計
合同会社アトリエカフエ ・カンザキセッケイ室・木村慎弥建築設計事務所・エーゼロ株式会社
構造設計
柳室純構造設計
家具什器製作
合同会社アトリエカフエ 、西粟倉村内事業者
サインデザイン
株式会社タケコマイ
撮影
笹の倉舎/笹倉洋平
オープン
2020年11月

プロセス

①村からの依頼で、所有者・運営者・村民・移住者を対象としたワークショップを実施

②ワークショップ成果を実現するため、設計チームを結成し設計開始

③村産木材利用を設計に組み込むため、製材所と協働

④2020年3月新築棟・既存棟リノベーション竣工。その後家具デザインと製作を受注

⑤家具を製作し、サインと合わせて設置。2020年11月オープン。

プロジェクトドキュメント

2017年9月、初めての西粟倉村へ。これまでに西粟倉村で仕事をしてきているグラフィックデザイナーの竹岡さん(株式会社タケコマイ)からお誘いいただきました。村の敷地活用のワークショップを一緒に企画・実施をすることになりました。
2017年11月から、所有者、運営者、村民、 移住者を対象とした基本構想のワークショップを開始。全4回のワークショップを行いました。
この成果を設計に活かすため、引き続き弊社で設計をさせてもらうことになり、神﨑貴希さん(カンザキセッケイ室)と木村慎弥さん(木村慎弥建築設計事務所)と設計チームを結成して設計を開始しました。地元のエーゼロ株式会社さんと4社での共同設計です。
主な産業が林業である西粟倉村の村の建物として、村産材を活用した建築とすることは重要な条件となりました。製材所・材木屋である西粟倉・森の学校さんにお世話になりました。詳しく林業について教えていただくところからスタート。最終的には構造材と、内装材の合板も村産材を加工して製造されたFSC認証を取得したものを使用しました。既存棟のリノベーションでは、西粟倉・森の学校さんの商品である「ユカハリ・タイル」も使用しています。
構造設計は柳室純さんにお世話になりました。下記柳室さんによるテキスト。

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新築棟の各テナントは、内部への連続性と外部への開放性を 確保するために、一方向にのみ耐力壁を設けた門型のボックス状のボリュームとなっており、これらが分散配置されるという計画である。単体では一方向に対して耐力壁の壁量が不足してしまうが、各ボックスの配置を工夫するとともに屋根面で一体化させることによって、建物全体としては耐力壁の量・バランスともに充足させるというのが、構造としての回答である。必要なボックスのボリュームと大まかな配置計画が意匠設計者によって準備され、それらを3DCAD内でモデル化し、ボックスの配置と耐力壁仕様をパラメトリックにシミュレーションできるプログラム開発を行った。一見ランダムに分散配置されるボックスの配置計画を、創造的かつ効率的に実現するための工夫である。
エーゼロさんと協働して監理を行い、我々は2週間に一度ほどの定例会で現地へ。
2019年3月新築棟と民芸館リノベーション竣工。ここから家具やサインのデザインに入ります。
サインデザインはワークショップをご一緒した株式会社タケコマイの竹岡さん。室名サインが好評です。
主に旧民芸館の家具を弊社でデザイン・製作しました。木材は全て村産材を使用。壁側カウンターは、建築材として使用しづらい芯材を使った集成材天板と、梁の端材を積み上げた脚で構成しました。その他、ロッカーや新築棟のテーブル椅子などは村内の事業者による製作です。
2020年11月、家具とサインも設置が完了し、オープンしました。今後も一緒になってこの場でいろんなシーンが生まれることを考えていきたいと思っています。